お腹の赤ちゃんは何を見ているんだろう

 もうすぐ赤ちゃんが生まれます。大きくなったお腹や、エコーの画像を見せてもらうと、赤ちゃんが外に出てくる準備をしているのが分かります。でも、赤ちゃんがお腹の中で何を見聞きしたり感じたりしているのか、そしてこの時期の体験が生後どう影響するかは想像するしかないんですね。例えば胎教といって音楽をかけてみても赤ちゃんにどんな風に届いているのかわからないように。自分の忘れた記憶を辿ってみても何も出てきませんが、お腹の赤ちゃんの成長過程を見ていけば、たとえば初めて音を聞いたときのことや、光を感じたとき、ものを見たときのことを、思い描けたりするのかもしれません。
 安心マタニティブックという本には、お腹の中の赤ちゃんがどんな風に成長しているかが日ごとに説明が載っています。たった一つの細胞から出産予定日までの266日間の成長過程を辿っていくと、赤ちゃんの体験している世界を5億4千300万年前に生命で視覚を初めて獲得した三葉虫が感じたかもしれない「光だ!」っという感覚に繋げて考えたくなるぐらいすごいことが起こっている気がします。普通はやっぱり生まれてからが「ヒト」として見がちですが、実際にはその境界はヒトに都合のよい解釈で、最初の細胞分裂から完璧な順序で連続的に今の姿に変化しているんだなと思います。これは遺伝子にプログラムされていることがすごいのでしょうか。わかりませんが、赤ちゃんの成長のうち視覚や聴覚に関する部分を抜き出してみました。これが生命力なんですね。すごい。

はじめての妊娠・出産安心マタニティブック―お腹の赤ちゃんの成長が毎日わかる!

はじめての妊娠・出産安心マタニティブック―お腹の赤ちゃんの成長が毎日わかる!

○1ヶ月
0日目(2週と0日) 受精
1日目 初めての細胞分裂
4日目 妊娠を助けるグループと赤ちゃんそのものになるグループに分かれる(杯盤胞)。
7日目 絨毛が作られ細胞塊は1箇所につなぎとめる碇の役割を果たす。着床が完了すると赤ちゃん細胞は胎芽と呼ばれるようになる。
○2ヶ月
15日目 細胞に3層の組織、内胚葉、中胚葉、外胚葉ができてくる。目のレンズや、耳の内側と外側の膜、神経システムなんかは外肺葉から作られる。
18日目 赤ちゃんの頭からお尻の長さ(頭臀長)は、1〜1.5mmほどに。中枢神経系も作られ始める。
28日目 目のレンズに映ったものを伝達する視神経の発達が脳内で重点的に行われる。妊娠判定薬などで妊娠を確認できる時期。
30日目 目玉らしきものが入った眼窩ができてきます。
34日目 赤ちゃんの脳を二等分する分け目が現れます。赤ちゃんの重さは、わずか0.001gほど。この頃には外からさわられる刺激に対し、反応を示すようになります。神経系統と筋肉が互いに連絡を取っています。
36日目 目の網膜内で色素の形成がスタート。
○3ヶ月
43日目 反射作用がすでに備わっています。頭にふれると、赤ちゃんは逆の方向を向くようになります。内耳にはバランス感覚を司る三半規管が作られ始めます。
46日目 まぶたが現れます。
47日目 16〜18mm、約1gの大きさに。目の構造がかなり発達。でも見る力はまだ備わっておらず、その位置もウサギのように頭の横にあります。
50日目 目の網膜内の色素沈着が完成します。
60日目 これからの3日間で目の虹彩(黒目の中心にある瞳孔の外側にある薄い膜。)が発達します。さらにこの2日間でまぶたの発達が進み、赤ちゃんの目が閉じるようになります。
65日目 赤ちゃんの脳は出生時と同じ構造になります。
66日目 赤ちゃんに新たな反射神経が発達し、顔にふれると目を開くようになります。これはルーティング反射と呼ばれるもので、新生児がおっぱいを見つけるのに役立つものです。
○4ヶ月
86日目 赤ちゃんはさらに器用で機敏になります。例えば、頭の向きを変えたり、口を開けたり、唇をぎゅっと結んだりすることができます。体重がまだ50g強、身長約8.5cmしかない赤ちゃんにとってはすごいことです。
91日目 閉じたまぶたの下でゆっくりと目が動くようになります。
○5ヶ月
101日目 まばたき、飲み込み、吸い込みという、3つの反射神経による動きができつつあります。
○6ヶ月
138日目 目はまだ閉じていますが、この時期になると、まばたきのような動きをします。
140日目 中耳の骨が、音の伝導をよくするために固くなってきます。すでに胎児は音の情報を脳に伝えることが出来ますが、何の音であるかは判断することは出来ません。でも大きな音はびっくりする反射を引き起こすので、音の大小は脳内に記憶されます。この1〜2週で赤ちゃんは大きな音を聞くと、目をパチパチさせたり、ジャンプするようになります。
152日目 子宮の中の赤ちゃんが日常的に聞いている音には、ママの心音や声、ママの肺を空気が満たす音、息を吐く音、お腹や腸がなる音などがあります。ママの体から発せられる音を、ほとんど耳にしているのです。
○7ヶ月
164日目 これからの4日間で、視覚や聴覚に対して脳波が動き出します。現時点では赤ちゃんの目が光をとらえたり、耳が音を感知するといったことができます。でも、まだそれが何を意味しているのか理解することはできません。
172日目 この時期になると、脳波が出生時のそれと似たものになってきます。視覚と聴覚の情報を処理する脳波が働き始めます。
○8ヶ月
182日目 この時期の赤ちゃんは光や暗さに対し、とても敏感になっています。でもまだ物を認識することは出来ません。
186日目 これからの3日間で、光、音、味、においに対する感覚が敏感になります。皮膚をさわられたことがわかる触覚は、すでに出来上がっています。
188日目 赤ちゃんの眼球が動くようになります。胎児は見る練習をしています。赤ちゃんには子宮の内側はどのように見えているのでしょう?ママが洋服を着ていないときや、明るい日差しの中にいる時は、胎児の世界はピンク色をしています。暗い部屋の中にいるときは、胎児の視界も暗い状態です。お腹の赤ちゃんは光の強さの変化にも気付きます。でも、ピンク色を判断するには生後何ヶ月もかかります。出生時の赤ちゃんは、かろうじて赤、緑、黄色が判別できる程度です。
192日目 目が開いている時間が多くなり、赤ちゃんは見る練習をしています。
205日目 赤ちゃんの目は薄暗いときには開き、まぶしい明かりのときは閉じるというように、光の量に反応し始めます。これは反射行動のひとつで、瞳孔反射と呼ばれてます。
○9ヶ月
218日目 起きている時の赤ちゃんの目は開き、眠っているときは閉じるようになります。まだ目の色素沈着は完成していないので、いまは青色をしています。最終的な目の色素沈着が怒るためには、数週間、陽の光にさらされる必要があります。
赤ちゃんが視覚情報を伝達できるようになっているとしても、いま彼らが見ている世界がどのようなものをかイメージするのは難しいことです。焦点を絞る能力はまだ確立していません。
新生児の目は物の形、線、色などを覚えるので、最初に与えるオモチャは視覚的に刺激を与えるものがいいかもしれません。
○10ヶ月
241日目 この時期の赤ちゃんは、光の方向に自然に向くことができます。これは「オリエンティング・リスポンス(定位反応)」と呼ばれるもので赤ちゃんが世界に順応して行くために役立ちます。
266日目(40週と0日) 赤ちゃんの出産予定日です。ママの子宮にいる間、赤ちゃんの世界は水に包まれていました。水が流れる音は赤ちゃんを眠らせるのに役立ちます。赤ちゃんがなかなか寝付けない時に試して見ましょう。