白熱電球とはなんだったのか

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 「東芝ライテックは17日で、一般白熱電球の製造を終えた」というニュースを観て、そういえばどんなんだったかと思い、スタンドのセードを外してみました。そうそう、これです。薄暗い部屋でひときわ輝く、天井からよくぶら下がったりしていたあれです。近づくと温かくて、触ると熱い。背を向けると大きな影を落とし、遠ざかると暗すぎるがゆえに、絶妙な距離感を保ちながら部屋の中心を獲得してきました電球。セードをはずしてみるだけで、すぐに思い出したので、いつのまにか普遍的な光のイメージが出来ていたのでしょう。照らされていたことよりも、影で見えにくかったことのほうが容易に思い出せます。電球の形も太陽や月と同じくらい、馴染みのあるものと言ってもいいかもしれません。これほど、変わらなかったものも珍しいです。
 今のように多様化する光の中ではこうした普遍的なイメージを持つのは難しくなると思います。だからかは分かりませんが、この先、一般白熱電球を使わなくなることなんて想像することは無理です。白熱電球と同じものは他に無いからです。パソコンもレコードの代わりになってないし、デジカメもフィルムカメラの代わりになってないように。朝目覚める音楽は音量や元気のよさよりも音質が効いたり、写真のリアリティが鮮やかさや明るさよりも粒子感にあったりするように。新しいものと古いものをどう使い分けていくかというところに、豊かさが生まれる気がしました。
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