サブリミナル・インパクト

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)

 サブリミナルというとなんか怪しいイメージがありますが、そんなことは全くなく、実験によって潜在認知の過程を明らかにしていくのがとても面白かったです。写真から好きな人を選ぶと、判断が下される約1秒前から選ぶほうに視線が偏っていた。この実験結果などから、自覚的な選好判断に先立って視線が選ぶほうに偏るという身体的な特徴を発見したそうです。この視線の動きは、相手に好意や意図を察知してもらう手がかりとなっているようで、確かに言われてみると視線に対する敏感さにはそういったタイミングが関係してそうな気がしました。好きだから見るというのは当たり前として、見ることでもっと好きになるという特徴が備わっていることになります。この性質を逆手に使って、見せ方をコントロールすることで好みを左右することもできたそうです。確かに見比べてるうちに最初の印象が変わることはあるかもしれないし、妙なバイアスをかけたくないときなど一瞬で判断したほうがよい場合もあるんじゃないかと思いました。
 本人がそれを自由な選択だったと感じるかどうかは、損をしたかどうかなど認知的な過程で決まる。そして選んだ理由は本人が気づかないように脳で捏造される。また選択行動そのものは大部分潜在的で、機械的に決まるそうです。現代では手軽な選択肢が増え、自由は快適に取って代わられつつあるといいます。潜在的であるからこそ、あいまいな部分やかすかな感触に目を凝らす。これってやっぱり重要だと思います。
Sandro Del-Prete
 何が見えますか。ということで人が見えるかイルカが見えるか両方見えるかという話が出てきました。これ見たいものしか見えないということの、すごくわかりやすい例だと思いました。一度両方見えてしまうと後戻りできなくなるのはなんででしょうね。